「泣いてるの?」
真っ青な空を見上げていた私を覗き込んで彼女は言った。
何を言われているのかわからなくて首を傾げたら、頬を指先でなぞられる。
ペロリ。
あんまりにも自然な動作で指先を舐める彼女に、目を瞬く私は驚くだけ。
なんで舐めた?
「あれ、しょっぱくない。じゃあ涙じゃないのかな」
「……涙って感情で味変わるらしいよ」
「じゃあ泣いてたの?」
「泣いてないよ」
私も、何言ってるんだろう。
今大事なのは涙の味じゃない。
「なんで舐めるの」
「直接は舐めてないよ」
「そーゆーことじゃないかなあ」
どうして私の方がおかしいみたいな顔するの。
どう考えたって指で拭った水分舐める方がおかしいでしょ。
「汗かなあ……でも汗も塩分だよねえ」
ポツ。
首を傾げる彼女を呆れて見ていたら、彼女の鼻先に雫が落ちた。
パチリと目を瞬いて、空を見上げる彼女は、花開くような笑顔を空に向けた。
「君が泣いてたんだねえ」
雲ひとつない青空から、雫が落ちてくる。
ポツ。ポツ。ポツポツ。ザザザザザッ。
「わ!?早く屋根のあるとこ行こ!」
「わあ、ギャン泣きだあ。どうして泣いてるのー?」
ああもう。
目も開けていられないような降り方なのに泣いている空を見上げて動こうとしない彼女を引っ張る。
引っ張ったら動いてくれるから、急いで建物の中へ。
泣き虫な空は、まだ泣き続けている。
お題「空が泣く」
9/17/2023, 9:59:17 AM