紫煙

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(夢が覚める前に)
毎日夢を見る。それは、学校で授業を受けている夢だったり、仲間と冒険をしている夢だったりとジャンルは違うが、いつも決まって出てくる子がいる。僕より少し低めの身長で黒曜石のように長く美しい黒髪を持った女の子だ。
 「また、いたなぁ。」
その子を見掛けるようになってから、僕は毎日目覚めると、日記を書くようにしている。夢日記というやつだ。
夢は儚く、数分でぼんやりとしか覚えていられなくなり、30分もすればすっかり忘れ今日の予定を考える。それを阻止するために、僕は日記を書く。それでも、絵ではないのでその子の顔を覚えているかと聞かれたら、頷くことは出来ない。けれども、とても美しいことは覚えている。

 「誰なんだろうなぁ。」
その子を夢で見るようになってから、僕は登校中その事ばかり考えるようになった。見始めたのは高校二年生になったばかりの頃で、あれからもう一年以上たち、季節は高校生活三回目の梅雨のシーズンに入った。

3/20/2024, 3:41:45 PM