言葉はいらない、ただ…そっと手を伸ばす。けれど触れるのは怖くて手前で止まる。椅子の冷たさが伝わってくる。臆病者め。そう自分を詰ってると、指先に触れる温かさ。ぱっと顔を上げるとそっぽ向きながらこちらに手を伸ばす姿。驚かせてはいけないと捕まえたいのを堪えて、待つ。そっと手の甲まで来た手に、耐えきれず指を絡める。びくりとあちらが動いたのが分かったが、それでも手を引っ込めずにいてくれる。その温かさだけで充分だった。
8/29/2024, 11:03:43 PM