平 夏希

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病室

 最近自分の中での「すべきこと」の価値が揺らいできている。毎日学校へ行き、授業を受け、帰宅する。繰り返す日々。「なんの意味が?」「なんの為に?」わからないまま日々が過ぎていった。

 ある日の放課後、私は今日締め切りだったプリントを提出し忘れ再登校をさせられていた。校門へ行き、階段を上り、職員室へ向かう。その時、ピアノの音が聞こえた。
どこからだろうと周囲を見渡すと、普段閉まっている体育館の扉が開いていた。私はプリントの事を忘れ、微かに聞こえる音色に心を奪われ、気が付いたら体育館へ足が動いていた。
 
 体育館に付くと、1人の女子がピアノを弾いていた。
その音色は美しく、私の心を釘付けにした。(容姿も完璧)曲は私が今弾いている曲と同じ
「ベートーヴェンソナタ5番op 10 1 第1楽章」
だった。私はその繊細さに惹かれた。強弱がはっきりしていて、オクターブも頑張っている。
なんて、素晴らしい人なんだろうと私は心から思った。
この時私は気がついた。私はピアノが好きでピアノを弾くために毎日が繰り返されているんだと。(?)
 
 そんな叶わない夢を見て、私は今日も病室の薄暗い空間で1日を過ごした。

8/2/2024, 3:41:21 PM