夏目冬々

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『心の灯火』
ふと、立ち止まる事がある。
その瞬間は日々を過ごす中で唐突に訪れる。
主に考え事をしている時にやってくるものだと思う。

それは仕事で行き詰まっていること。
それは今日の晩ごはんは何にしようと考えていること。
それは数ある中から一番欲しい家電を選びぬくこと。

そんなようなことを考えながら散歩でもしていると、
不意に巡らせた思考がピタリと止まる。
まるで金脈でも掘り当てたかのように「…あ」などと言葉を呟き空を仰いで動きが止まる。
立ち止まるのだ。

おそらく現時点にて、考えうる中の最上の解が導き出せたのだろう。
間違っているかもしれない。
振り返ると何て愚かな事を思いついたのだと思うかもしれない。

ただ、その瞬間においてはどんな粗末な解決策であろうと
人は立ち止まり、「これなら行ける!」と確信し力強い一歩を歩み始めるのだ。
その瞬間、立ち止まったその瞬間。
心の中では小さくとも灯火が一つぽうっと灯ったに違いない。

仕事での先方への伺い方が決まったり、
晩ごはんは青椒肉絲に決まったり、
家電は一番人気のメーカーのものに決まったり。

そんな小さな事にでも
人は心に火を灯し、希望とし生きているのだ。

9/2/2024, 3:40:36 PM