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洗濯物は角っこを合わせて畳むあなたと、多少はズレるわたし。
肩から体を洗うあなたと、二の腕から洗うわたし。
映画館で塩キャラメル味のポップコーンを頼むあなたと、サルサソースのナチョスを頼むわたし。
側位で眠るあなたと、促位で眠るわたし。
右と左で向かい合い。

いつもはどこかあわないけど、それでも最後は2人でいる。
あなたが買ったキノコのようなカサのランプに照らされて、柔らかいクリーム色の髪が揺れ動く。どうやらそれはあなたの右腕が動いたからのようで、その腕は私の背中に回された。引き寄せられるようにして距離を縮める。

「……よく寝れそう?」

「おー」

問いかけると聞いているのかわからない答えが返ってくる。
それで少し安心した。あなたが調子の悪い時はいつも無言だから、声が聞けるだけでいい。脱力してあなたの胸に頭を預ける。分厚いくせに妙に柔らかい。ホットケーキに寝そべったら、こんな気分なんだろう。ご機嫌な調子でいると、あなたも楽しくなってきたみたいで私の髪をいじり始める。かきあげるようにして指の隙間に何房かさし入れた後、そのまま毛先まで伸ばしていく。

「髪の調子大丈夫そ?」

「おー」

「………。」

今度は返しようのない答えだと思った。しかし本当に髪の調子を知りたいのではないし、あなたの気分に変わりはない。したいようにすればいい。目を瞑って、されるがままに身を任せた。明日の天気はどうなっているのだろう。今の天気は……わからない。外の音は入ってこないから。あなたの心臓の音は聞こえるけど、それだけ。わたしの頼りはそれだけなのよ。



アラームで彼が起きる前に目を覚ます。わたしもあなたも、寝てから目覚めるまでずっとこの姿勢。だからちゃんと鼓動が聞こえるの。昨日よりは遅い。トクントクンって。それに耳を傾けながら、わたしの左手はあなたの左手に触れる。慣れたもので、探す必要もない。そこから親指、小指、内側の3本の輪郭を掴む。その指たちの内側の右側。そこが薬指。根本にわたしの五指を添えさせる。あなたが何で悩んでいるのか知ってるよ。それをわたしに言おうとしない理由も、考えているそぶりも見せない理由も。
 
洗濯物は角っこを合わせて畳むあなたと、多少はズレるわたし。
肩から体を洗うあなたと、二の腕から洗うわたし。
映画館で塩キャラメル味のポップコーンを頼むあなたと、サルサソースのナチョスを頼むわたし。
側位で眠るあなたと、促位で眠るわたし。
右と左で向かい合い。

いつもはどこかあわないけど、それでも最後は2人でいる。
前の女なんて関係ないの。最後は2人。あなたとわたし。

11/7/2023, 3:18:27 PM