逃れられない呪縛
小さい頃からピアノが大好きだった。
楽しい曲は跳ねたり飛んだり、悲しい曲は小さく静かに奏でる。
私の心を表現してくれる大切な相棒だ。
大会で良い成績を取ると両親や周りが喜んでくれた。
並んだトロフィーや賞状を見ると誇らしいようで、少し虚しい。
天才少女
才能に恵まれた女の子
みんなそう言うけれど、本当は何度も止めたいと思ったこともある。
ステージ上の私はトロフィーと同じ輝いた女の子。
でもステージを降りれば、厳しく辛いレッスンが待ってる。
怒りやもどかしさを鍵盤に叩きつけて、嫌いになりかけたことが悲しくてたまらなかった。
でも、ピアノを諦めることなんて出来なかった。
無意識に膝を叩く指先や頭の中を流れる旋律、気付いたらいつもピアノの前に座ってる。
どこまでいっても私は逃れられない。
私の魂を縛り付ける、美しく抗えない旋律たち。
指先を鍵盤に乗せる。
何もかもを振り払うように激しく指を踊らせる。
私は、この呪い(祝福)と共に生きていく。
5/23/2023, 1:09:52 PM