星野 エナガ

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卒業だ。この学校から。僕には好きな人がいた。だけど、結局伝えられなかった。あの人はここから落っこちてしまった。あの人は3年生。僕は1年生。あの人は僕と同じ部活で先輩後輩の関係。いつも、部活の仲間や僕にわからないことがあったら教えていた。だからか、みんなあの人のことを「大人びた人」と言っていた。あの人が最期にいた屋上には遺書があって、書かれていた言葉は「大人になりたくない」だった。そうして、あの人は散ってしまった。
部活のみんなはそれを知らない。先生しか知らない。僕はあの人はいつも屋上で過ごすから、いつも隠れて見ていた。だから、一番最初に遺書をみた。
そして僕は、あの人のなりたくなかった大人になってしまう。

『桜散る』より

4/17/2023, 11:48:19 AM