雨の木曜日 遥かなる記憶

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俺らの おどう(お父さん)は出稼ぎに出てる

おらの町は人口1000人にも満たない

小さな集落混在していた山あいの里

岡山市から西に70キロくらいとこだ


そう…

過去に混在していた山あいの町…


今は人口900人を来年にも割ろうかとしている

過疎かと高齢化がハイスピードで進み続けてます

町には仕事が無くて、おどうは出稼ぎに出る


今時、出稼ぎになんて…おかあ(お母さん)は…

勝手口で隠れて泣いてた…


僕たち兄妹はどうしたら良いかわからずに…

ただ母さんの手を妹と握った…

母さん…母さん、それさ大根の御味御汁だよね…

母さんの御味御汁は世界一だよ…♪

あたしはね…朝ね玉子を割ったら双子だったよ…♪

母さん!母さん…♪


母さんは…

いつもの母さんの優しい笑顔になって

僕たちの手を強く握り返して言った…

お父さんは笑って大阪に行かせてあげようね!


ジャガイモを蒸かす蒸気の向こうから

おどうの声がした

深雪 岳士 こっちゃ来い~!

おどうは驚いた顔して言った

ベフのお腹が大きいのは知ってたか?

ベフが?お腹?仔犬?……仔犬!!ベフ!!


岳士 深雪 おどうは来週の土曜日から遠くに行くから…

ベフがお母さんになるのを支えてあげてくれ!

頼んだぞ!


僕たち兄妹は正直な気持ちは不安いっぱいでした…

でも…

涙を隠して笑う母さんを思い出して…


おかあとの約束を守ると


今決めた…



おどう!まかせて!

深雪と2人で絶対ベフをお母さんにするよ!!

約束するよ!!必ずねぇ…!!


おどうはベフのお腹を擦りながら…

左腕で僕ら抱きしめた…


深雪が…

おどう…!痛いよ…痛い…

ごめんよ…ごめんな…

大きくなったなぁ、って思ってね…


母さん頼んだぞ、!!



そして、

おどうは優しく笑った…




おどうが大阪に行く日の朝、

僕ら兄妹は些細な喧嘩をした

僕は口をきかなかった…


おどうが…


玄関を出てく…


おどうの声が遠くに行く…


でも…

でも…泣かないって…

決めたし…


おどう…

おどう…風邪ひかないでね…

おどう…無理はダメだよ!

おどう…

おどう…

おどう…寂しいよ…ほんとは…

おどう…ほんとはねぇ…!!

深雪と喧嘩したのは…

深雪におどうを少しでも…

俺…お兄ちゃんだから…

ごめんなさい…おどう……



おどうを乗せた組合長さんの車の音も

遠くに…

もう聞こえなくなった…


おどう…


行っちゃった……





僕は慌てて裏山を駆け上がった!!


頂上近くから組合長さんの車が見えた…


おどう…

寂しいなんてもう言わないから!!

おどう!!おどう!!おどう!!

深雪とがんばるよ!!!

……




津軽平野に雪降る頃はよ

おどう1人で出稼ぎ支度

春には必ず おどうは帰る

土産いっぱいぶら下げてよ

寂しくなるけど なれたや

おどう…


お岩木山よ~

見えたか おどう…


津軽平野 吉 幾三







2/28/2024, 12:49:10 PM