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オーブンを開く前から、甘くて香ばしい匂いがしていた。開けた隙間からふわっと立ち上がる湯気を浴びながら、よく焼けたクッキーを乗せた天板を取り出す。少し間が空いたにしては、とても良い出来なのでは、と鼻歌まじりに皿へと並べる。いつもならクッキーを皿に出すなんて勿体無いことはしない。
今日は別に特別な日ではない。思い立ったが吉日。そういうこと。
バターが安かったということもなかったし、作るたびにおそろしい量の砂糖にドン引きもする。でも、自分で作るお菓子というものはとてもとても良い時間を作ると思う。
たまには。

3/5/2023, 3:59:00 PM