ぺんぎん

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この、ただいっしんにたぎる炎の揺れゆくさまをわたしはもう見ていられなかった、だからきみにやすいキスをねだった。きみは少し、ほんの少しためらったあとにわたしの紅でめかした唇にそろりと、小鳥のさえずりのような触れるだけのやさしいキスをした。きみはわたしと同じ色の唇をぬぐいもせずにあっちに行ってしまった。わたしはあのとき、生れてはじめて、人目も気にせずにひたすらにしゃくりあげて泣いた。あのとき燃え広がったもので心が大火傷をした。ひりひりとただれて痛む。今もずうっと。

5/8/2023, 2:44:00 PM