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おじいちゃん…
「おぉ。絢か。よくきたなぁ。ゆっくりしてけよ。」

そう言っていつも温かい気持ちで待ってくれているおおらかで優しいおじいちゃんでした。

最期会えたのは先週の火曜日でしたね。 
病床に呼んでくれたおじちゃんは始め虚ろな意識の中でした。
でも肩を擦り呼び掛け手を握ると、あの日も待ってくれていたね。ふうっと顔色が鮮やかに戻り、声は出せなても穏やかな呼吸で私と夫に優しく語りかけてくれているようでした。

おじいちゃん・おばあちゃん夫婦は私たち両親のはねおやで、
私たち姉妹の誕生を心から喜び祝福しその後の成長も楽しみ、 血の繋がった孫のように大切に可愛がってくれました。  

お家にお邪魔する私たちを喜ばせようと、おばあちゃんは美容室お客さんの時間を調整して、たくさん美味しい料理を準備し、おじいちゃんはお酒が好きだった父のために様々な種類のお酒や珍しいおつまみを用意し、雄二お兄ちゃんとみち子お姉ちゃんたちと家族一緒にいつも温かくもてなしてくれました。

その中のおもてなしで忘れられない味があります。
それはお蕎麦です。

おじいちゃんは店のように細くのど越しの良い蕎麦を打ち、
おばあちゃんはいりこの出汁が効いた優しいおつゆを作ってくれました。仲の良かった二人だからこそ織り成せる最高に美味しいハーモニーでした。

そして大切なおばあちゃんを亡くし寂しい日々の中でも、
長年培ったノウハウで農業を続け家計を支えてきましたね。
農作業で腰を曲げられてしまったり、病気で手が不自由になってしまっても、お姉ちゃんの手を借りながら日焼けし額に汗を流しながら真面目一筋。様々な作物を造っていました。

その中でもおじいちゃんの作るネギは太く甘くみずみずしく真っ直ぐなネギでした。 

出荷するには泥のついた状態からスーパーに並ぶ状態にするまでの工程を要し、とても手間の掛かる作物です。
薄暗くなってからも腰を曲げ、使いにくくなってしまった手を器用に使い、収穫したネギ1本1本に心を込め薄皮や根っこを丁寧に取り除いてきれいに箱詰めするおじいちゃん。
その懸命に働く姿は息子の心にも刻まれ、その場面を思い出すと胸に熱いものが込み上げてきます。







7/20/2024, 2:48:18 AM