ank

Open App

三つ編みを垂らしたおじさんが、四つん這いになっている。
ピンク色のパンツを履き、ゴムの部分には中肉がのっている。

「これ、ですか?」
「はい。こちらにお座りになって、安全ベルトを締めてください」
女性は私におじさんの黒々とした三つ編みを手に持たせる。
わたしはそれを腰に巻き付ける。
おじさんが少し嫌がった顔をした。

「すみません。こう、ですか?」
「ええ、合っていますよ」

「……え、あ、あのタイムマシンって。シートがあって、電波塔みたいなんが立ってて…あ、それ違う? それはドラえもんですか。ほら、車型のデロリアン…あそれ違う?それはバックトゥザ・フューチャーか。空想の話ですよね」

女性は嗜めるように私を見る。

「行きますよ?いいですか?」
「ええ。お願いします」

私は腹を括った。文字通りおじさんの三つ編みで腹は括られているのだが。
私には使命がある。
未来を守るという使命が。

ウィーン、とおじさんが動き出した。
交互に動かしていた四つん這いの足はもう見えないほど早く回転している。

「それでは、未来へ。レッツラゴー」

強い閃光が瞬き、女性の声が遠ざかっていく。
私は、タイムマシンの形ってこれが最適だったんだなぁとそんなことを思っていた。


【もしもタイムマシンがあったなら】

7/23/2024, 8:21:04 AM