「食べ物系は注文しなくていいの?」
「今はいいや、お腹空いてないんだよね」
いや食べようと思えば食べれるんだよ?でもさ、お腹空いてないのにわざわざ食べるの損した気分になるじゃん。と君は言う。
「昼が遅かったの?」
「いや食べてない」
「朝から何も食べてないってこと?」
「いや、昨日の夜から」
「……え、今日なにも食べないの?!」
「うん」
「なのにお腹空いてないの!」
「だからそうだって」
向かいに座る久々に会う友人は、前から痩せていたがさらにヒョロヒョロになったように見える。都会のおしゃれなカフェで平然と大きなあくびをした。おかしい、なんでこうも違うんだ。私なんか朝トースト2枚とヨーグルトとフルーツも食べたのにお昼まで待てなくてお菓子をつまみ、お弁当だけじゃ足りないので追加でサンドイッチを調達し、午後は同僚が配ってくれた差し入れやお土産やらをつまんだにもかかわらず今腹ペコだというのに。
「……すっご」
おまたせしましたと定員さんがテーブルにプレート料理とサイド料理を次々並べてくれる。定員さんが立ち去った後、全部の料理をなんとなく私の前に押し出し空間を確保しブラックコーヒーに手を伸ばしながら言われた。
「あんたのがすごいよ」
「え?」
「毎日早く起きて、朝ごはんとお弁当用意して」
「…そりゃお腹すくから」
「私だって学生の頃は朝も昼もお腹すくから食べてたはずだけど、それって親に用意してもらえてたからで、今は食べたきゃ手間も金もかかる
そう思ったらだんだんおなか空かなくなっちゃった
だから偉いよ、あんたは」
いっぱい食べてさ。とコーヒー片手にテーブルの上の大量の料理をちらりと見て含み笑いで言う。
「それはどうも」
褒められてるというより馬鹿にされてる感じもするが、ただ食べたくて食べてるだけなのに偉いなんて言ってもらえることもないのでありがたく受け取ることにする。
「ところで本当にこれ全部食べきれるの?」
「当たり前じゃん余裕だよ、あんたのコーヒーが冷めないうちにね」
9/26/2025, 1:02:08 PM