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色とりどり

磨いた木の床に白いファーをひいて、転がす裸石たち。
アクセサリーとして細工される前のカッティングされた貴石を集めるのが、
唯一の贅沢だ。
小さくてもきらきらと輝くダイヤモンド。
ガラスにぽつりと一滴落とされた血のようなルビー。
広い海のど真ん中を抜いて凍らせたサフィア。
ネオンブルーに中から光をこぼすパライバトルマリン。
キラキラ星が落ちて転がったシトリン。
太陽の光を透かす5月の若葉のペリドット。
深く熟成された洋酒を凝らせるトパーズ。
テーブルに溢れるハチミツみたいな琥珀。
甘い苺ミルクを思わせるローズクォーツ。
夜明けの空の一筋切り取ったパパラチアサファイア。
金の雨が降る時間を閉じ込めるルチルクォーツ。

そして、夕闇迫る紫に染まる空気のタンザナイト。

囁やかに輝くルースの中にそっと寝転がってぼんやりするひとときは、
何にも代えがたい時間なのである。


1/8/2024, 1:23:30 PM