狼星

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テーマ:明日世界がなくなるとしたら、何を願おう     
                       #174

「明日世界がなくなるとしたら、何を願おう」
『そうだなぁ。人間は滅んでほしいかな』
「それは、君たち異世界人のため?」
『それもある』
私には生まれつき、人じゃないなにかが見えた。
彼らのことを私は異世界人と呼ぶ。
『人間は厄介だ。我らの支配下にはおけぬ』
「支配下?」
『あぁ。人間には到底理解できないだろうよ』
声の主である異世界人は、私をからかうように言った。
『人間は人間の上下関係とやらがあるのだろう?』
私は頷く。
『それこそ厄介じゃ。皆、平等と言っておきながら自らの首を自らが締めよる』
「でもその連鎖は止められないよ」
私がそう言うと声が笑う。
『だから、明日世界がなくなるとしたら、人間は滅んでほしいといったんじゃ。迷惑な関係性をなくすためだ』
「でも、支配下に送っていったじゃない」
『それとこれとは別』
そう言ってふっと笑う声。
『人間同士が支配し合うから悪い。我らのような異世界人こそがこの世界の上に立ち……』
話が長くなりそうだ。
異世界人は話が長い。
でも納得できることもある。
人間が一回滅びれば、
戦争やら環境破壊やらはなくなるだろう。
ただ、
世界が滅びたらそんなことは言っていられなくなりそうだ。
人間だけじゃなく、異世界人だって消えるだろう。
今はただ、
楽しくなくても生活できる、
平穏な毎日が続いていくことを願う。
世界が滅びたらその時はその時だ。

5/6/2023, 1:15:57 PM