半袖?
私にはそんなものいらない。
私は長袖の方が好きだ。
リスカも隠せるし、私の身体自体が醜いから。
そんな身体を隠せる部分が減る半袖は……夏は、嫌いだ。
それももう今日でおわり……
❀✿❀
僕は昔から腕に大きな痣があった。
これは生まれつきのものだから。僕の中では別に気にするものでもなかった。
でも、周りは違った。
『おかしいね』 『きもちがわるい』
僕は途端にこの痣が醜くて仕方なくて、コンプレックスになった。
お母さんに言ったって、皮膚科に行かせてくれなかった。
なんたってうちにはお金がなかった。
僕はそれから、夏でも長袖で行くようになった。
みんなからもちろん非難された。
でも、コンプレックスをこの世界中にさらけ出すより、何倍もましに思えた。
『この痣のせいで僕は……』
何度口に出したか分からない言葉をまた口に出す。
『その痣そんなに嫌い?』
ある1人の少女は話しかけてくる。
もちろん僕はうんと答えた。
そしたら、彼女は突然彼女の腕を僕の目の前に持ってきて見せてきた。
『みて。私の痣。君と同じところ。』
それがどうしたんだろう。とおもった。
そんなの何も僕とは関係ない。
それに見たところ彼女は自分の腕の痣に対してのコンプレックスもないように感じる。
『そういうのうっとおしい』
ちょっといい過ぎたと思ったが、訂正するつもりもなかった。
どうせ彼女も僕から去っていゆく人の1人でしかないと思ったからだ。
でも違った。彼女は毎日僕に話しかけてきた。
僕は正直びっくりしていた。
こんな人もいるんだ。と知らぬうちに彼女に心を許していたのかもしれない。
でも、彼女は突然いなくなった。
僕は内心とても驚いていた。
どうしてだろう?
何故あんなにも元気だった人が死を選んだのだろうか。
❀✿❀
昔の僕はそんなことを考えていたな。
今なら分かる彼女は……
僕……いや、私。
だから、彼女がいなくなったということは。
やっと今日が、おわるということ。
じゃあね。
5/28/2023, 12:45:57 PM