過ぎ去った日々
音楽科に通っていた私は、みんなの前で弾く実技試験が大嫌いだった。前期と後期の年2回。
高3の後期、ちょうど1月だ。
大学受験を控えているから、完成度の高い演奏を次々と披露する。
怖かった。でも私もみんなと同じように受験を前にして必死に練習していた。だから大丈夫だと言い聞かせた。
そして本番。
頭が真っ白になった。
覚えたはずの音符がどこかへ消えた。
動かなかった。指が。
間違えた。止まった。弾き直した。
ボロボロの演奏をしたのはクラスでひとりだけ。
泣いた。めちゃくちゃ泣いた。
練習したはずなのにどうしてそうなったのか分からないし、自分だけ置き去りにされたようで悔しかった。
大号泣したその日から、ピアノに座るのが怖くなった。
でも、もう一度「大丈夫君ならできる。」と言い聞かせ、戦うことを決めた。
そして、一校目の受験当日。
またしても上手くいかなかった。
二校目。
もう無理だと諦めて楽しんで弾くことだけ考えた。
よし、いけ。
すべての努力の成果をみせるときだ。
強い気持ちでピアノに向かった。
弾けた。そして受かった。
高校三年間の努力が、ようやく出せた。
努力が報われる瞬間だった。夢が叶う瞬間だった。
そして今、あの過ぎ去った日々が私の心を強くして、ピアノに今日も向かっている。
それは明日も続くだろう。
だって、音楽がやっぱり好きなんだから。
3/9/2024, 11:25:47 AM