小さなつぼみは、歳をとって、茶色くなった枯葉のおじいちゃんに、「緑の葉っぱの時のお話してよ!」と、元気に話しかけた。「おやおや、またかい。」と、ハニカミながら答えた。
枯葉のおじいちゃんは、冬の澄んだ、糸が張り詰めたみたいな空気を葉っぱ全体で大きく吸った。そしてから、小さな咳払いをして、嬉しそうに話し始めた。
わしの若い頃は、まだ葉っぱも綺麗な緑色で、活き活きしていた。夏になると、仲間と色んな話をしたり、夏の爽やかな風に揺られてふざけ合ったりしたもんだよ。秋には、葉っぱたちがほっぺを真っ赤にして、みんなで働いたんだよ、冬を暖かく越すためにね。
冬は寒いが、特にものすごく冷えた冬があってね、ほんとうに寒かったんだよ。
枝に雪がたくさん積もってね、夜になれば、その雪が金色の月に照らされて、キラキラ眩しかった。
どの季節も、本当に良かったよ。けど、わしが1番好きだった季節は春なんだよ。
あの、なんとも言えん匂いが好きだった。
色んな花の香りが混ざってね、雪が溶けて湿った土の匂いも大好きだった。
本当に季節は美しいよ。綺麗でどの季節も輝いてる。季節は、4つだけではないと思っている。
何万個、何億個、無限に季節はあるんだよ。
どれも、綺麗なんだ。その日によって、風の匂いは変わるんだ。
雨が降った日も、暑い日も、寒い日も、全部素晴らしいんだよ。わしは、全部の季節が好きなんだ。
ふと、つぼみの孫の方を見ると、いつの間にか寝ていた。ほっとしたように、枯葉のおじいさんは、風に乗って、舞い降りていった。そして、まだ葉っぱが緑の頃に憧れた、春雨で湿る土に葉っぱ全体をつけて、またハニカミながら、眠った。
2/19/2024, 11:30:23 AM