花畑
私は今日、花畑にいた。
野に咲く花のことではない。宝石の花畑だ。
祖母の遺品の宝石を親族で分けあって所持しようと言われ、エメラルドやアメシスト、パール、珊瑚などのついた様々な宝飾品と鑑定証の数々に囲まれた。
本当に素敵で、手入れの行き届いた美しいアクセサリー。
こんなに綺麗なものを、私なんかが付けても構わないのだろうか?
おどおどしていると母が「それはそんなに値段張らないから」と告げた。
「そんなに……」
そんなに、とはいくらのことだろう? そんな価値の優劣で遺品を選ぶなんてことはさすがに。
母はなんてことないように言った。
「時価●K円くらいだから貰っていいよ。あっちのはお家建てられるけど」
軽い気持ちで踏みいった花畑が、途端におそれ多く感じられた気がして苦笑いを隠すのに必死だった。
9/17/2023, 11:10:53 AM