Shizuku

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お題
『君と最後に出会った日』



僕が最後に見た君は笑っていた。

僕はその笑顔に、ふわっとしたその心地良さに惚れんたんだ。
僕は中学の時ヤンキーだった。自分で言うのは恥ずかしいけど、、今の性格とは程遠くグレていた。
あの日も当たり前のように他校と喧嘩しては勝って眠かったから中庭で寝てた。起きたらいつの間にか隣に女がいて…

『あ、起きたんだ。如月くん』

俺は知らない女だった。聞いてもないのにそいつは話し出す。

『如月くん、知らないと思うけど私たち同じクラスなんだよっ!』

『いつも気になってたんだよ、怪我したまま寝てるから』

「あそ、」

人と話すことが嫌いなのに、何故か話せた。

『ほら、絆創膏貼っておいたからね。』

顔にも腕にも足にも貼ってあった。

『じゃあね!ちゃんと手当するんだよ〜』

笑っていた。彼女は笑っていた。
その笑顔と優しさが気がついたら大好きになっていた。その後も彼女は手当をしに中庭に来ることが多くなった。弁当だって作るようになった。そしていつの間にか俺の隣にずっといるようになった。
気づけば3年。俺は中3になっていてヤンキーもやめていた。未だに彼女とは一緒にいて、、でも付き合っている訳では無かった。受験もまじかになって会わなくなった。でも連絡は途切れなかった。


『やっほ〜!うわ、似合ってる!』

久しぶりに見る彼女はやっぱり綺麗だった。

「同じ高校、、なんで言わなかった?」

『うーん、サプライズ?』

なんのサプライズだよ、とツッコミを入れて高校の門をくぐる。

「また、3年間よろしく」

僕がそう言うとひとつ間を置いてから彼女は頷いた。
高校でも隣にいた。付き合いたかった。でも言い出せなかった。隣にいるのが当たり前で、でも彼女は時々悲しい表情をするから、こんなに長く一緒にいる僕にも言わないから。タイミングが分からなかった。
そしてまた、会わなくなった。連絡もなくなった。
また明日、!そう言って笑顔で言ってたじゃないか。何を、こんだけ隠してた…。
君に会ったのはそれが最後。
どうかお元気で。

『楽しかったよ。ありがとう。』

6/27/2023, 8:18:28 AM