二酸化炭素。

Open App

「黄昏」
君は誰?
もうまともに思い出せない。
薄れかかった記憶を頼りに彼女を思い出す。
友達?先輩?友人?親友?家族?
全ての可能性を思い出せ。
君は一体誰なんだ。
どうしてそんなに悲しい目で愛しい顔で僕を見つめるんだ。どこかで会った様な懐かしさと安心感。
「もう良いよ…大丈夫だから。…安心して」
彼女が透き通った声でそう告げた。
何が大丈夫なんだろう。溢れそうな涙と震えた唇。
全てが優しい嘘で涙が溢れた。
忘れちゃいけないのに、触れちゃいけないのに無性に抱きしめたくなる。
「僕は…どうして…こんなにもあなたを求めてるんだろう」そんな疑問を投げかけた。
多分聞いちゃいけなかったのに。
消えかけていく身体と記憶とあるはずの掌。
嗚呼、僕はなんとひどい人間だ。
これが運命というさだめなのに…
君をこんなにも求めてる。
今日という日が続けば良いなんて生前は思ったこともないくせに。
神様、都合のいい人間でごめんなさい。
そしてきっと僕は君にこんなことを言うだろう。
「「ありがとう」」
それから日は静かに沈んでいった。

10/1/2022, 6:15:50 PM