愛言葉
みちゆきのあと それともさきかもしれない。
パチン。と弾けた、糸が切れるように
――赤い稜線はふっと吹き消されて
誰のせいでもなく、ただ、道を見失った。
ただあたたかなこころだけを 導くような 深く刻まれていたであろう内側が、尾を引くような、願いが込められて逝く。何度も消えかけている、それとも聞こえないふりをしているのか、それでも子守唄のような安らぎと心地よい眠りに、ワガママも包ませる、嘘でもいいから信じさせて それが幸せだと、畏れ憂う日々を過ごす。
もう元には戻れないほどの道を、それだけを抱いて、仕舞いが来るまでそれだけを求めて。
それは家族でも恋人でも友人でもただ大切に思うその心を、言葉に変え、自分を見失わせるだけの力を生み、けれどその言葉に支えられ未知は拓かれるとも言われている。
あら? 「私は何をいってるのかしら。」
不意に我にかえる瞬間、抱えていたランタンを思い出す。
灯火が揺らいでいた。ここは痛くも寒くもない。遠くに光を憶えている。頭が重い、体が思うように動かせない。心が惑っていた、何処へ征くのか何処へ向かうのか、思い出せないけど、逆らえない呪いのような愚かなもの、優しいだけの【愛言葉】を抱いていた。
聞こえるかしら。
その風のしらべが どこまでも喘いでいる。
おんぼろの舟にふたり揺られて流され続ける。櫂を失くしたまま、虹色の水面を転げるようにうたう うたかたたちが弾けては消える。まぼろしを見たのかもしれない、ただそれを信じるまま追いかけていた時がある。
囁いたり描いたり口付けたり、伝わるための手段はなんでもいいけれど
その熱は光は海はどこへ溜まり堕ちるのだろう。
突き刺すように灼いて 囁くように削いで 苛烈の如く夢見て
幻を一欠片 含んで、折りますから
今はただ、空高く舞い上がれ!
したためられたものがたりは どんな世界を広げるのだろう
彼方楽園へ 届くまで、口ずさむ 理想郷の錠と鍵は 錆び付いて奇声を発するだけ、その言葉は狂った羅針盤を置いて、それぞれ違った航海に往くものだろう。
なう(2022/10/26 20:46:16)
10/26/2022, 11:43:24 AM