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私の家の目の前に、公園がある。
その公園は、普通の大きい公園よりも少し小さくて、静かな公園。

その公園には木があって、全部で10本くらいある。

その中で一番大きいのが、ビックさん。
笑えるけど、私が木に名付けた名前だ。
小学2年生くらいにつけた名前だから、ネーミングセンスが無い。
5年生になって思ったことだ。

そう思っていただけかもしれないけど、ビックさんは、私が嫌なことがあって、落ち込んでいるときに、葉をさわさわと震わせ、励ましてくれた。

6年生のある日、すごくけたたましい音が聞こえた。
学校からの帰り道、もうすぐ家につくというときだった。
(なんだろう。工事でもしてるのかな?)
そう思って曲がり角を曲がると、私の頭の中は考えることもしないくらいにショックを受けていた。

「ねぇ、最近変じゃない?大丈夫?」
仲良しの美里が心配そうに声をかけてきた。
「うん…大丈夫だよ」
それしか答えられなかった。

私は学校からの帰り道に、ビックさんが元立っていた場所に腰掛けた。

「…ビックさん、私、最近嫌なこと続いてて、困ってるの。ビックさん、私、どうしたらいいかな…」
そういっても、ビックさんはもういないから、葉を震わせてもくれないし、影を作ってもくれない。
「ねぇ、ビックさん〜〜っ」
私は切り株に抱きついて泣いた。ビックさんとの思い出を蘇らせながら。

私は、人とあまり話さない。だから、いつも悩みは木のビックさんに聞いてもらっていた。
これからは、ちゃんと人と話して、美里との仲も深めていくよ。
ビックさんは、誰よりも優しくて、誰よりも私を好きだった。

2/16/2024, 1:23:28 PM