呼吸をやめない猫

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【特別な夜】


「ありがちで特別な夜」

電車の中で複雑な思いを抱えながら失意でいっぱいになって泣いた日。私はこのフレーズを聴いた。

忘れもしない2021年3月25日。国民的バンド、
スピッツがデビュー30周年を迎えた日。

生まれてはじめて自分の話し方を真っ向から否定された気がした。

初めてバイトの面接に行きはっきりと言われた。


「そんな話し方で話せるのか」
「今まで話し方教室に行っても治らなかったのか」


たまたまそういう話し方というだけだったのに。
生活に支障はないけれど確かに話し方に名前がついていてたどたどしいのは否めなかった。

「吃音」

初めて聞いたとき名前があるんだなと思った。

苦しくも悲しくもなかった。

良いことでも、悪いことでもなくただそういうものがあるんだというだけだ。


ジャングルジムで遊んでいたらAちゃんがこう尋ねた。

「どうして『あ、あ、朝さ』っていう話し方なの?」

Aちゃんの質問に答えることはできなかった。

「分からない」

そう答えた。自分でも気になったけどジャングルジムから降りた時にはもう忘れていた。これが生まれてはじめて自覚した瞬間だ。Aちゃんの質問でたまたま気づいただけなのでいつからこの話し方になったのかは分からない。



自覚から1年後妹にあなたには吃音があるのだということを伝えられた。
なぜか妹の方が先に私の吃音を知っていた。ちなみに彼女に吃音はない。



この時吃音のことを妹が話したのは理由があった。
吃音があるから(あなたは)言語教室に通うらしいということらしい。

流されるままに言語教室に行くための検査をし、そこに4年間通った。

この言語教室とは吃音を知る教室であり「治す」教室ではない。

今思えば面接官にはそれを伝えれば良かったと思う。
でも実際には吃音を否定されて頭が真っ白になっていた。

これまであまりに吃音への配慮や理解をされすぎていて、吃音があることも忘れていたから余計に気持ちが沈んだ。

この日初めて社会的な壁を感じた。

苦い思い出だけどそれが私の特別な夜。

1/21/2023, 3:14:22 PM