頁を捲る手を止めて小さな窓を眺める
昼か夜かも分からない曇天
今にも雨の降りそうな湿っぽい空気
頭痛が止まらない
目を閉じると今でも鮮明に思い出す
まるで悪夢のように
何度も
何度も
救急車の音が近づいてくる
俺は大きく息を吸い
止まりそうな心臓を必死に動かす
大丈夫、大丈夫だ。
ただひたすら自分に言い聞かせる
救急車の音が遠のいていくと
再び身体が正常に働きだした気がした
今日はオール確定だな、
張り詰めた筋肉を意識的に緩めながら
開いていた頁に変色した銅の栞を挟む
本を丁寧に机の上に置くと
空のマグカップを持って立ち上がった
机の上には読み込まれた本と
冷めた紅茶の入った色違いのマグカップ
「最悪」
6/6/2024, 4:16:34 PM