なぎさ

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静かな空間の中、私は全神経を耳に集中させてみる。そうすれば、何か音が聞こえてくるはず……。
30秒、1分、5分、30分……ついに1時間が経つが、なんの音も聞こえない現状は変わらない。
なんで?
普通、1時間もあればなにかの物音とか風の音とか、なにかしらの音は聞こえてくるものなのに。なんで何も聞こえないんだろう。こんなに聞こうとしているのに。
音が聞こえないというのは、私にとっての不安材料でしかなかった。人の話し声も、歩く音も、物音も、鳥の鳴き声さえ聞こえない。
どうしてここは、こんなに静かなんだろう。真っ暗なわけではない。私はずっと座っているけど、無機質な部屋の中だし、人の気配はする。
こんなに音が聞こえないことって、あるんだろうか。
さすがに泣き出しそうになったとき、目の前にあったドアが開かれた。──────音は、しなかった。
白衣を来た女の人がやってくる。──────歩く音は、しなかった。
女の人が私の前にある椅子に腰掛け、口を開く。──────なにも、聞こえない。
少し経ってから女の人は諦めたようにため息をつき、紙になにかを書き始めた。──────その音も、しない。
次に女の人が私に渡してきた紙に書かれた内容を見て、私は自分に何が起こっていたのかを知った。受け入れられたわけじゃ、なかったけど。

そこには、こう書かれていたんだ。

「あなたの耳は、聞こえなくなっています。」

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#耳を澄ませば

こんにちは、なぎさです。不定期投稿になります。
今回のお話の内容で、不快に感じた方がいたら、本当にごめんなさい。

5/5/2024, 9:45:01 AM