汚水 藻野

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「おれはオマエの言う"世界"が見てみたいな。彼奴らと対等な、世界を!」

先輩はそう言った。
過去の人間なのだから、未来が気になるのは分かる。ウン年後の自分、周りにいてくれた人たちがどうなっているのかなんて、誰しも一度は考えたと思いたい。それに、未来が分かる奴が隣にいるのでなおさらだ。

「………私は見たくないです。」

私はなぜか無意識に呟いていた。
先輩はそんな私に目を見開いた。
見たくないという理由は分かった。
どのくらい先の未来なのか、それを先輩のいう「私がもといた世界」だと仮定するなら。
未来を見てしまったら、私はきっと…。

「未来」には、お父さんもお母さんも、友達も、彼等もいる。
だから目を瞑った。この世界に飛ばされるのは少しの間だけ、だから頑張って耐えるんだ、と。そう願いながらも、帰れなくなってしまった。もう帰る手段が無くなった。

でももう帰らなくてもいいかとも思った。
ここにいる人たちは未来で見たことのある人がたくさんいた。安心していたのかもしれない。その人たちは私に良くしてくれた。

だから"それ"を口に出すのはやめた。
はずだったけど。

"それ"を言ってしまったら、過去も未来も、どちらかが、いや両方とも、否定してしまうような気がした。

もしも未来が見えるなら。
そこは自分が死んだ後の世界くらいが。
ちょうどいいのかな。

#2024.4.19.「もしも未来が見えるなら」
pkmn 照コンビ。
未来を知ってる人間が過去の世界に飛ばされて、そこでお世話になっている先輩に「未来見てみたいよなー」と言われた主人公。
pkmn要素ほぼないのでぜひ読んで下さい。

4/19/2024, 1:02:06 PM