M氏:創作:短編小説

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幼子がちり紙をちぎったような雲が浮かぶ晴天
青々とした木々が並び生を謡う森林
中心に咲く湖は陽の光をチラチラと見送り輝く

白い柔肌は陶器と例えるには血色が良く
空気を撫でる無数の翼は鳥と例えるには味気ない
反射する光に混ざる白銀の髪が風に撫でられ靡く度に

私は彼に向けた感嘆たる吐息を零してしまう

男性にしては女性的な
女性にしては男性的な
中性的な容姿からのびる純白の翼は

彼を天使と呼ぶに相応しい程に美しい

『ボクが美しいのは認めるけど…水浴びしてる様を見つめられると居心地が悪いよ』

困ったように眉を寄せながらため息を着く
己の鼓膜を優しく刺激する声は鈴のよう
いや、風鈴の方が合っているのかもしれない

シャウシャウと水面を揺らしながら
水浴びを終わらしたと湖に見送られる彼に一言を

『ジロジロと見られながら水浴びをする趣味は無いからね』

返ってきた言葉にぐうの音も出ない
美しいものをずっと眺めていたいなんて願望は
美しいものがあって初めて浮かぶもの
その“美しいもの”が拒否を表したのなら己は申し訳なさそうにするだけだ

『そんな顔をすんなよ、見つめたい程ボクが美しいのは変えられない事実なんだから』

自慢げに話し胸を張る彼の無邪気な笑顔が眩しい
翼を多数有する“多翼族”の彼はその希少さと美しさを理由に鑑賞奴隷として貴族間で人気の種族だ
現代となっては奴隷解放令もあり何人もの貴族が血涙を流しながら手放したが
その気持ちも分からなくもない

それ程に美しい少年が自分の視界で感情を見せ
身体を見せて言葉を連ねる
出会い全てが偶然と言えどもその存在をこの身に焼き付けたいと願うのは人の心が無いのだろうか

『いつまでボーッと見惚れてるんだ、行くぞ?』


お題:脳裏
作者:M氏
出演:クル・I・ルー


【あとがき】
創作種族を出演させた酔っ払いです(今酔ってるからあとがきちゃんと書けないのでいつか書き直す)

11/10/2023, 8:03:31 AM