―大好きな君に―
ここは小さな喫茶店。
僕はここのマスターで君は常連のお客さん。
今日も君はカウンターの一番端で僕の淹れたコーヒーを飲み、僕の話に耳を傾けてくれる。
最初は、短い言葉を交わすだけだったが、次第に打ち解けて近況や悩み事なんかも話すようになった。
会話の最中、君が見せる笑顔が堪らなく好きだ。
だけど、この想いを打ち明ける日はきっと来ないだろう。
君はある日こんな事を言った。
『私、マスターの淹れるコーヒー好きです。このお店に来ると落ち着くし、話も面白いし』
この言葉を聞いて、僕は自分の想いを封じ込めた。
もし、僕がこの想いを伝えたのなら君はもう此処へは来ない気がした。
君からこの場所を奪いたくない。
だから僕は君に一杯のコーヒーを淹れる。
「お疲れさま」という気持ちを込めて、それだけで充分だ。
3/5/2023, 8:32:44 AM