向かい合わせ
アイツとは随分長いこと競い合ってきた。勉強も運動も、アイツがいたから頑張ってこれたし、引っ張ってもらえたと思っている。
そしてそれはきっと、自惚れでなければアイツも同じことを思っているんじゃないかと感じている。
だからもう少し――。
「おい!しっかりしろ!」
俺を抱きかかえたヤツが大声と共に揺さぶってくる。頭痛むから止めろ。ただでさえ全身痛いんだ。
交差点に突っ込んできた車、その前にいたヤツを突き飛ばしたのは、助けたいとかそんなんじゃなくて、咄嗟すぎてわからない反射だった。
でもきっとコイツも同じことしたんじゃないかな。
俺とそっくりな――向かい合わせの鏡のように――ヤツはぼろぼろ泣きじゃくりながら俺に向かって何か叫んでいる。なんて言ってるかは聞こえない。けど。
――俺も、もっと一緒にいたかった。
言葉として出てかはわからない。喉も口も動いていなかったかもしれない。けど伝わってほしい。
今まで隣を一緒に歩んできたコイツに。
8/25/2024, 10:28:32 AM