踊り子

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音がする。
世界を濡らす慈雨の音ーーー外は雨。
音はただ柔らかに夜を埋め、私の落とす息が時々埋められた夜を掻き乱す。
優しい雨と絡みつく夜にうずもれて、このままここで微睡んでいたいと思うけど、やがてきらきらと弾む朝がやってくるのも知っている。
柔らかな夜も、もうすぐ浮かび上がる朝も、悪くないと思ってる。

教えてくれたのは明けの空。
夜も昼も知らず、息も出来ずにもがくばかりだった私に注がれた光を、見返したのはいつだったか。
重く絡みつく塵芥ばかりではなく、柔らかな、慈雨から成る温かな、その包むような静かな音も、ちゃんと世界にあるのだと。明けの空が教えてくれた。

払うような激しさではなく、ただそっと届けるような、それでも真っ直ぐな一条の光のようなそれでもって、夜も雨もやがてさやかに晴れるだろう。

今はまだ夜に揺蕩っていても。
確かに届いたあの瞳を、ずっとずっと憶えてる。

忘れない。

忘れられない…いつまでも。


“忘れられない、いつまでも。”

5/9/2024, 6:20:23 PM