【お題】窓から見える景色
季節が変わりはじめている今日この頃。まだ少しだけ夏の気配を残しながらも夜になればスズムシやコオロギの鈴を転がす様な声が聞こえる。
季節はもうすぐ秋になるのだ。
僕は何気なく窓から外を覗いた。今日は綺麗な秋晴れでなんだかそれだけで嬉しくなった。
そうして窓の外の景色を見ている僕の目にもう一つ嬉しい出来事が写った。
彼だ。
彼が僕に会いに来た。
自惚れているなとは自分でも感じている。それでも彼がここに来る理由は自分くらいしか思い当たらないので仕方がない。
黒くサラサラした髪に黒い大きめの瞳、黒縁のメガネをかけた少し猫背の青年。少し長めの前髪が秋風に遊ばれるように揺れている。
そんな彼を凄く……“綺麗”だと思った。
いや、彼はもともと綺麗で可愛い。
本人は自分をよく卑下しているけれど僕からしたらこんなに綺麗で美しくて可愛いくて愛おしい子は他には知らない。それは外見の話だけではなく内面も全て含めて。
無意識にじっと彼を見つめていたら不意に彼がこちらに目を向けた。
瞬間バチッと目が合った。
途端、彼の黒曜石のように煌めく大きな黒い瞳がこれでもかと大きく見開かれる。
そんな表情も可愛い。
手でも振ろうかと考えているうちに彼はまた少しうつむきながら歩き始めた。
でも僕は見逃さなかった。彼の控えめな白い耳が赤く染まっていたことに。
9/25/2022, 7:26:27 PM