「付き合って下さいっ」
元気な声が辺に響く。
ここは学校の校舎裏。
放課後は人気の無い静かな場所だ。
そして僕のお気に入りの場所。
今日は告白の日。
相手の下駄箱にラブレターを仕込んだ。
来る確率は低かったが無事に来たようで何よりだ。
とは言っても、僕が告白するわけではない。
少し手伝いをしただけだ。
頼んできたのは仲の良いクラスメイトだった。
彼女の名前は中原 紬(なかはら つむぎ)。
学校で、1、2位を争う可愛さだ。
そんな彼女の好きな人は成績優秀、スポーツ万能。
まぁ所謂(いわゆる)、完璧な人間だった。
が、ルックスは上の下くらいで釣り合いがとれているとは考えにくい。
因みに、彼女も完璧と言って良い人間だった。
ただ、本人には言っていないが彼が中原の告白を受けるとは考えにくいのだ。
別に特殊な性癖とかそんなんじゃない。
彼も当然の如くモテるのだ。
彼女もいる。
浮気をしようが僕は構わないが人の気持ちを考えられる人間ならまず受けない。
「………はい」
プロポー、じゃ無かった。
まともじゃなかったか。
いや、仕方ないのかもな。
彼女から告白されたんじゃ受ける以外は無い。
のかもしれない。
「嬉しい!ありがとう。これからよろしくね。西山(にしやま)くん」
しかしまぁ腹黒い女だ。
僕が言っていないとはいえ、中原が知らないとはありえない、と言って良いほど情報網が広い。
彼が付き合っているのは中原の友達だ。
怖いものだな、中原という人間は。
この手のタイプは自分の危機に躊躇無く人を身代わりに出来るタイプだ。
一言で言うと、性格が悪い。
か、自己中心的。
こんな事を僕が考えているなんて知られたら間違いなく殺されるな。
「ねぇ、早速二人で帰らない?」
「いいよ」
即答かよ。
もうちょっと考えろよ。
彼女もいるんだぞ?
聞かれてるかもしれないのに、成績優秀とは言えど馬鹿なのかもな。
案外。
「あ、ごめん!ちょっと待ってて、電話出てくる」
「ここでいいけど」
「……そっか」
なっ。
嘘だろ。
電話なんてかかってきて無いだろ。
僕は知っている。
あの女はマナーモードになんてしない。
つねに、電源をおとすかそのままの二択しか無いのだ。
ん?
ライン?
確認してる暇なんて無い。
今は二人を見るのに忙しいんだ。
「何してるの?電話でなくていいの?」
「いや、悪いからさ。ラインで今無理って送ってたの」
「男?女?」
「んー、秘密」
あ、もしかして。
……やっぱり。
中原からだったか。
‐LINE‐
中原「電話かけてきて」
中原「無視しないでよ。見てるんでしょ?」
中原「早くして?」
中原「海(かい)?」
「名前で呼ぶな」
中原「はいはい、で、電話」
中原「大山は一旦追い払っとくから」
「チッ」
プルルルルルプルルルルルプルルルルルプルルッ
「もしもし?」
「何だよ」
「……何でそんなに小声なの?」
「僕と大山(おおやま)が友達なの知ってるだろ?殺される」
「ふ~ん、なんで?」
「いいから早く要件を言え」
「…Oと付き合ってる子いるでしょ?一か八かで告白してみてよ」
「O?…大山のことか。無理だと思う」
「顔で落とせるんじゃない?」
「まぁ、中身しられたら終わりだけど?」
「無口で通せば良いよ。告白だけならバレないでしょ」
「そろそろ切るぞ、大山がお前の事見てる」
「分かった。お願いね」
ピッ
‐LINE‐
中原「やらなかったら、変な噂広めるから」
「何なんだよ…」
中原 紬
ふふっ。
どうやって振ろうかな。
大山って以外と面倒くさいとこあるし。
嫌な部分見つけるか…。
荒木(あらき)に頼んだおいた告白が成功すれば、上手く鉢合わせてぶつからせるか。
可愛そうだけど、仕方ないよね?
だって、あの子、私の悪口言ってたみたいだし。
苦しんでもらわなきゃ。
それにしても、今日は良い一日だったな。
荒木とも話せたし。
ちょっと回りくどいけど、荒木と噂になっちゃったら荒木が可愛そうだしね。
滅多に話せないし、姿も見たいけどこれからは少しくらいなら会える時もあるだろうし。
楽しみだなぁー。
ー恋物語ー
追記:純粋な恋愛とはちょっと違くなってしまいました。
一応、キャラの名前を書いています。
主人公 荒木 海 読み あらき かい
主人公を好きな女の子 中原 紬 読み なかはら つむぎ
女の子に告白された人 大山 碧 読み おおやま あお
告白された人の彼女 森岡 結月 読み もりおか ゆづき
読んでくれてありがとうございました。
5/18/2024, 12:21:46 PM