さくさくとわたしの前髪を手際よく梳いていくきみが、銀にひかる、きれいでひんやりとしたはさみが好きだった、じかに肌にふれるくすぐったさで目をぎゅっと閉じた、陽光と暗闇の狭間にわたしはいた、ふと手が止まると同時に瞼をひらいた、やけに明るんだ世界できみはわたしだけを刺すように見つめてそれからすぐ逸らした、わたしはその熱を孕んだ目にひどい痛みをおぼえて、もうきみを正面から見ることはできないと思った、さっききみがふれていただろう黒い束束が褪せた新聞紙にばら撒かれていたのを見て、もっと胸が潰れるようだった
4/24/2023, 1:11:33 PM