「雪道の歩き方、ちょっとは上手になってきたじゃん」
からかうように言う先輩の息が白い。
いつもなら即座に反論するところなのだが、今は私の荷物を代わりに持ってくれているので、それに免じて仕方なく口をつぐむことにする。
雪が積もり出した頃、雪道に慣れていない私は先輩の目の前で盛大に尻餅をついてしまったのだった。
そんな私を助け起こしながら「ペンギン歩きだよ」と先輩は言った。
曰く、「ペンギンのように歩幅は小さく地面に真上から足を下ろす感じで」とのこと。
最近はその感覚がなんとなく分かるようになってきた気がする。
寮から駅までの道をゆっくりゆっくり歩く。
雪道に集中しているのと寒くてあまり喋りたくないのでお互いに言葉少なになるが、それがなんとも言えず嫌ではない。不思議な感じだった。
こんなに寒いのにこのまま歩いていたいような気がした。
駅に着き、先輩は律儀に改札のところまで送ってくれた。
「じゃあ、また来年!」
笑顔で手を振る先輩を見て初めて、帰りたくないなと思った。帰りたくて仕方なかったはずなのに。
「また来年、か」
新幹線の席につき、窓の外をながめながら、今年はなかなか悪くない一年だったな、と思う。
それは少なくとも、はじめてこの土地にやってきた時には全く思っていなかったことだった。
第一志望の大学に落ち、金銭面を考慮して仕方なく選んだ大学に通うため、故郷を遠く離れたここまでやってきたときには。
新幹線が走り出す。
今年は悪くない一年だった。
しかし、もうすでに来年が待ち遠しいのだった。
『1年を振り返る』
12/31/2024, 8:46:27 AM