みや

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 ふ、と意識が浮上した。ゆるやかに覚醒する視界の中で、見慣れた薄暗い室内が飛びこんでくる。

 ああ。夢か。

 ぽっかりと穴が空いたような寂寥感があった。
 懐かしい人に会った夢を見ていた。幼い頃から仲良しで、高校くらいまでよく一緒に遊んでいた彼女。大人になるにつれて少しずつ疎遠になって、けど決して仲が悪くなったわけでもなく、思い出したように数年おきに連絡を取っては近況を話して思い出話に花を咲かせていた。いつも一緒にいるわけじゃないけど、思い出の中に必ずいるような大切な友人。

 彼女が亡くなったと知ったのは一年前だった。

 あのときの気持ちをなんと呼ぼう。ただ夢のように、ただただ信じられなくて、しばらくして彼女の実家で遺影の前に佇んだとき、ようやく彼女がいないのだと自覚した。みっともなく泣き出す私に、たゆたう線香の向こう側の彼女は優しい顔で笑いかけていた。

 たまに、彼女の夢を見る。
 明るくて少し破天荒なところがあった。大人しい私とは正反対で、でも不思議と仲が良かった。
中学の頃、みんなで彼女のお家に集まってクリスマスパーティーをした。クレープを焼いたり、ゲームをして大騒ぎして過ごして、彼女の祖母に窘められたのを覚えている。またやろうね、いつまで集まれるかな?そんな風に笑いあっていた。その夢を見た。

 ベッドから起き上がりカーテンを開けると、窓の外は白んでいて、夜が過ぎ去り、朝が来ようとしているのが見えた。こうやって毎日が過ぎていく。彼女がいなくても夜は巡り、朝は来る。私は毎日毎日、ただ何事もなかったように生きている。
 そうやって人は大切なものを少しずつ失いながら生きていくのだろうか。

 白んだ空が目に痛くて、私はまたベッドに潜り胎児のように丸まった。目を閉じたらまたあの夢が見れる気がした。どうせ朝が来たら生きなけれはならないのだから、せめてもう少しだけ寝ていたい。
夜が明ける前に、思い出の中の彼女にもう一度会いたかった。

9/13/2024, 10:21:47 PM