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「なんかさ、意味ない服着れないんだよね」
「……はい?」
「たとえばさベストみたいなのとか」
「……うん」
「なんか、レースのビスチェとか」
「…防寒要素がないやつってこと?」
「まあそうとも言える。ベルトとかサスペンダーとか機能性あるのはわかる、ウォレットチェーンとか最悪!」
「あれ財布つけてないんだ」
「つける人もいるかもしれないけど!」
「…じゃあアクセサリー全部だめじゃん」
「まあそうだね、なんか、意味ないものをあえて選んで身につけてる感が無理、耐えられない
我のセンスを見よ!!みたいなのが」
「そういうものですか」
「だって自分だったらなりたくないもん」
「は?」
「ウォレットチェーン」
「え、何の話?」
「Tシャツとかズボンは明らかに必要でしょ?その中で肩身が狭い、かわいそうまである」
「余計なお世話だろ
じゃあ何になりたいんだよ」
「靴紐だね」
「靴紐。」
「靴紐。靴紐がなければ歩けない。必須。でもあのシンプルな形状とさり気なさ。いやー靴紐になりたいね。」
「好きにしてくれ」
「色変えれば雰囲気変わっておしゃれにも」
「おしゃれはしたいのかよ!」

必要なものだけでいかに洒落たことしてなさそうに洒落たことをするのかが大事らしい。めんどくせえ。この思春期が。
会うたびに違う靴紐の色の謎が解けた瞬間だった。


9/17/2025, 3:25:47 PM