幸い、自分が入院したことは一度もない。
病室と聞いていの一番に浮かぶのは、肺癌にかかった祖父の見舞いである。
病室、もとい病院というのは本当に白いのだな、と子供ながらに思った。夜になると暗くなった空間に非常口マークの緑の明かりだけ灯されるのだろう。
化学薬品の匂いだったのか、なんだったのかは分からないが、病院には何かの匂いがたちこめていた。
上手く言語化できないが、あそこは恐ろしい場所である。
業務内容もさることながら、あの場所にひたすら身を置いている医療従事者にはとんと頭が下がる。
友人に、医者が何人かいる。
彼らは存外あっけらかんとしており、仕事の中での人の生き死にの話など全くしない。それが本当に気にしていないのか、それとも意識して話さないようにしているのかは分からない。
いずれにせよ、すごい精神の強さだと心底思う。
8/2/2023, 3:52:37 PM