#踊りませんか?
煌びやかな部屋の中で、優雅な音楽がはね回る。
紳士淑女は音楽に身を委ね、上品に踊る。
その中に一際、華やかなカップルがいた。
どちらも美形な方たちだ。
話によるとどちらも大国の御子息、御息女らしい。
それを遠巻きで見る私は、壁際に突っ立っている。
所謂、【壁の花】と言うやつだ。
「はぁ……」
なんとも憂鬱である。そして惨めである。
『すみません、ご令嬢。もしよければ私と踊っていただけませんか?』
「……」
『私も先程まで【壁のしみ】だったのです。その中で会場を見回すと、美しい貴方が立っていた。私は是非とも貴方と踊りたい。』
「同情……などでは無いのですね?」
『えぇ、そのつもりは毛頭ない。
美しく可憐なご令嬢、私の手を取って頂けますか?』
10/4/2023, 12:48:50 PM