「地獄、へ、堕ちろ」
男が任務終了の一報を入れる最中、足元に横たわる人間だったものが、そう恨み言をこぼす。
首元に二本指を当てる。肌はまだ温かいが、脈拍は感じられない。はて。
「神は、見て、いる」
おかしいな。とどめは刺したはずなのに。
顎に手を当て顔を上向かせ、瞳孔を確認すると、しっかりと曇ったまま。やはり、ちゃんと、死んでいる。
幻覚でもみているのか、それとも、怨念というやつか。目の前の死体はいまだ、唇を震わせ何かを伝えようと試みる。
「あっは」
死した上での神頼み。しかし、時既に遅し。滑稽で仕方がない。
男はしゃがみ、虚空を見つめる濁った瞳に目を合わせた。
「神は、見て」
「見とるやろな。でもな、見とるだけや」
なぁんも、しいひん。
男が真実を伝えると、その死体はカタカタと激しく震え出し、やがて止まった。
7/4/2024, 12:32:52 PM