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あなたが私のすべてだった。あなたに倣って、あなたと笑って、あなたを愛して。
一筋の光。私の世界を照らす存在。神格化と狂信。あなただけいればそれで良かった。なのに。
花瓶の置かれたあなたの席。
もう居ないあなたを追いかけるつもりでひとり、私は屋上に佇んでいた。
自分の気持ちを無視して、あなたを忘れてしまうつもりでした。どうしても無理でした。頭の片隅でくしゃりと笑うあなたに知らないふりをすると、あなたは酷く悲しそうな顔をするので、やっぱり無理でした。赦してください。残された道はひとつしか無かったのです。
靴を乱雑に脱ぎ捨てて、柵を乗り越えた先で、あなたの影がゆらりと揺れた気がした。

「一筋の光」

11/5/2021, 12:43:51 PM