Seaside cafe with cloudy sky

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【カレンダー】

◀◀【喪失感】からの続きです◀◀

⚠⚠ BL警告、BL警告。誤讀危機囘避ノタメ、各〻自己判斷ニテ下記本文すくろーるヲ願フ。以上、警告終ハリ。 ⚠⚠




















厨房に行くと伯母さんは夜のシフトでやって来た調理師たちと夕食メニューの準備に取り掛かっていた。その手を止めてもらって、エルンストはアランとともにランチのお礼を述べ、にわかに決定した二人旅のことを話した。伯母さんは我がことのようにはしゃぎ、またあの訳知り顔の人の悪い笑みで、エルンストに無言のメッセージを込めた視線を送るのだった。その時アランのスマートフォンが鳴る。取り出してしばらく画面を見つめたあと、「失礼、外で電話を掛けてきます」と言って先に出ていってしまった。出ていく前にはもちろんのこと、伯母さんへ山のような感謝と賛辞を奉り、ふたたび手のキス、果ては頬ずりまでしてのフルコースを完遂させてからの悠々とした退場であった。伯母さんのご機嫌はエルンストと反比例してたいそうご満悦と相成り、その甥と同じく色素の薄い彼女は紅潮した満面の笑顔で、今日のこと、カレンダーアプリの日記に書いておこう!とキャッキャ浮かれることしきりだった。そして ――
「やっぱり想い人だったでしょ?」
アランが消えて遠慮することが無くなり、妬きもちで不機嫌なすね顔をみせている甥の頬をつつきながら無邪気に訊いてきた。そんな伯母の屈託のない様子に降参し、クスリとほろ苦い笑みを浮かべてエルンストは素直にうなづいた。
「 ―― うん。間違いなく僕の想い人で、愛しの彼で、運命の相手だった。悔しいけど今日やっと気付いたよ……伯母さんには敵わないな」
食事を終える前の彼とは明らかに違う、不治の病を患っての物憂げな雰囲気を湛えるようになった可愛い甥を、伯母は慈しみ深く抱き寄せた。
「エル……レオはどう思うか知らないけれど、私はいつだってあんたの味方だからね」
温かいハグ。幼い頃から母親同然の彼女。思わずジンとしてエルンストは抱き返す手に力がこもった。
「さ、次の行動に移らなきゃ。かならず明日からの休暇をゲットするのよ、エル。そしたら晴れてアランと一緒に居られるんだから。もうこの旅行中で恋人同士にまでなっちゃいなさい!上首尾を祈ってるからね!」
パシンといい音を響かせてエルンストの二の腕をはじくと離れていった。さっきまでの無人状態からうって変わり、これから店は大忙しの時間帯になるのだ。早々に調理台へと去っていく伯母の後ろ姿を頼もしく見送り、出ていく前に「愛してる、クラーラ伯母さん」と彼女の背に声を張って伝えた。すると伯母は振り向いて投げキスを返すとまた背を向け、厨房の仕事に戻っていった。

▶▶またどこかのお題へ続く予定です▶▶

9/11/2024, 10:54:27 AM