束の間の休息____
小説日記
今日の朝は、おかしな夢で目覚めた。
おかしなと言っても、普通の夢だけれど。
朝起きて、いつものように支度をし、部屋にあった紙コップに入っているレモンティーを飲み干す。少し、口の両端から冷たい液体が溢れた感覚まであった。遅刻しそうになった私は、焦って家を出た途端、目が覚めた。
時計を見ると家を出る1時間前だった。私は、唐突に安心感に包まれ、ため息をつく。よだれがたれている。いつもは、周りから自分を見ている夢なのに、今回は自分自身からみている夢だった。私の夢はいつも非現実的だったため、普通の夢を見るのはとてもおかしなことだった。自分自身から見ることも。
ベットから重い体を起こして夢と同じように準備をした。そして、レモンティーが飲みたくなりペットボトルを冷蔵庫から取り出した。そして、遅刻することなく、家を出た。外は雪が降っていた。やっと暖かくなってきたというのに今年で3度目の雪だ。もう、冬は懲り懲りだ。早く春になってほしい。
学校に行き、朝読書が始まった。やっぱり、いつもより寒くて、私は制服の上からウィンブレをきた。指先まで袖を伸ばして、小説を開く。
主人公の茜は信じられなくらい強くて我慢ができる人だった。限界を超えた茜は登校中に、大嫌いなクラスメイトの前で吐いてしまう。そのクラスメイトと公園へ行き、学校をサボろうとしていた。マスク依存症の彼女は今日は、マスクを忘れてしまったため、気分が悪くなったと言っていたけれど、それだけじゃないと思う。だって、今までたくさん我慢してきた。それが溢れてしまったんじゃないだろうか。もちろん、マスクのせいでもあるが。
結局、この先茜はどうなるのかわからないまま、チャイムが鳴り響き私は小説を閉じた。
いつも、思ってしまう。
小説を読んだり、映画やドラマ、
アニメや番組を見たりすると思ってしまう。
『いいな』と。
知ってる。知ってるよ。変だって。おかしいって。でもね、羨ましいんだ。
茜は父親と妹とは血が繋がっていなく、血の繋がりがあるグレれた兄とパートで忙しい母。妹の子守や家事を手伝っては家族のために自分の時間を削って手伝いをしている。
そんな、茜が羨ましいと思った。
私の家族は理想的過ぎる。優しく、ときには厳しい母。面白くてたくさん遊んでくれる父。可愛くて生意気な妹。恵まれすぎてる。それに比べて、勉強もスポーツも家の手伝いも、何にもできない無能な私。家族にばっかり迷惑をたくさんかけて謝罪と感謝の気持ちしかない。
ときどき、私はこの家族と本当に血が繋がっているのかと疑いたくなる。だって、両親も妹も私から見たら完璧で、ここにいていいのかと不安になってしまう。
だから、羨ましいんだ。茜が。家族のために頑張れて勉強もできる茜のほうが私の家族にふさわしい。それに、ダメダメな家族なら私もダメダメでいいんじゃないかなって思えたんだ。周りが駄目なら自分も駄目でもしょうがないと思われるんじゃないかな。でも、きっと私は茜の立場になったら、今の私が羨ましいんだろうな。結局、無いものねだりだ。きっと、家族がダメになったら私がしっかりしなきゃと思い、今よりもっと強くならなくてはいけないと思う。だから、私も茜のような家族がいれば強くなれるのかな、なんて無責任なことをいつも思っている。
今から家の手伝いや勉強する努力をすれば、私も強くなれる。でも、できない。手伝いをしても、逆に仕事を増やして迷惑を掛けるだけだ。勉強をしても、全く上達しなくて、気がつくと机の上で寝ていることが多い。hsp体質の私は学校に行くだけで疲れ果ててしまう。
『やろうとしない』のか、『できない』のか私にすらよくわからなかった。
それでも。全部わかったうえでも。
やっぱり『いいな』と思ってしまう。忙しくて強くあり続けない環境にいる茜音が。
そんなふうに思える自分はどれだけ幸せで恵まれているかがよくわかるなといつも思い知らされる。
10/8/2022, 1:16:08 PM