秋霖雨

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 誰も知らない、誰も私のことを知らない場所へ行きたいと思う。
 知らない街並みの中で、知らない景色を見て、今までの私を知らない人ばかりのところで、新しい人物像を作って、一からやり直したい。
 きっとそこで見る太陽の光はどこまでもキラキラしていて、空も、世界も広く澄んで輝いているんじゃないかと。

 財布だけを持って、バスと電車を乗り継いで、どこか遠く、遠く……。


 そう夢見て、現実は外に出るのも億劫で、人とすれ違うと思うだけで憂鬱で、ただ玄関の一歩先へ進むのすら、重たくて、遠くて、ただただ『見たこともない理想的な街』へと、一人思いを馳せるのみ。

2/28/2023, 11:23:18 AM