飲みやすいようにと、君の前に置いてあげた炭酸は、随分とぬるくなっていた。
それを新しいものと取り替える。
「好きだもんな」
無反応なのを分かっていても、つい語りかけてしまう。
「また来たよ」
そう言って君の前にしゃがみ、見つめる。
「もう、あれから一年経つな」
君は答えない。その君に、手を合わせる。
それから、君に捧げた花を新しいものに取り替え、再度飾ってあげる。
君が少しでも寂しくないように。
君がいなくなっても、俺は君を想っていると伝えるために。
手にした炭酸のぬるさが、じわりと時の流れを告げるようで嫌だった。
———————————
ぬるい炭酸と無口な君
8/3/2025, 12:06:10 PM