ある日、僕は夢を見た。
それは、陽も昇り切らない薄暗い明け方に誰も居ない海辺を1人で歩いているというもので現実世界と区別するのが難しいほどに感覚が妙にリアルだった。
音を感じた。
磯に打付ける波の音が周囲の音を掻き消す。
風を感じた。
波風に煽られて髪がたなびき何度も手で掻き分ける。
穹を見上げると1羽の鳥が飛んでいた。
「君みたいに、自由にこの穹を飛びたいよ。」
と、言葉が通じる訳でも無いのにまるで厨二病真っ只中の中学生の樣な台詞を吐く自分を羞恥心が襲う。
すると、その鳥は僕の目の前まで飛んで来た。
その瞬間、僕は反射的に目を閉じる。
怖くて暫く目を閉じていたが
「(あれ、波の音がしない、、風も、、)」
と、先程まで感じていた波の音や風が急に止んだ事に気が付く。
「ドンッ…」
という大きな音が鳴り何かが身体に乗った樣な重圧が一度に掛かり、再び目を開けるとそこには地平線の彼方へと続く蒼穹の大地が何処までも拡がっていた。
「ドクン…ドクン…」
と、同時に鼓動が高鳴る。
まるで、この穹と共鳴しているかの樣に
「ドクン…ドクン…」
と、鼓動は高鳴り続けピタリと止まる。
そこで、僕は目を覚ました。
ある日、僕は夢を見た。
それは、1羽で何処までも遠くへ往く鳥になりこの穹を自由に飛び回る夢だった。
4/12/2023, 12:06:24 PM