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お題「愛があれば何でもできる?」

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すごくいい歌作ったな。
再生回数100万回だって。

彼は自分の事のように喜んで、誇らしげだった。

俺のSNSもついでにバズっちゃってさ、参っちゃうよ。
お前の彼氏だってだけで。やべぇ。

私の家で勝手にシャワーを浴びた後、私の部屋の私のソファに、まるで自分のうちにいるかのような態度で、彼は沈みこんだ。手には缶ビール。私の冷蔵庫から出したものだ。

サビのところのさ、愛があれば何でもできる! て歌詞がいいよな。アレって俺に向けた言葉だろ?

そうだよ、貴方の事だよ。
私は彼の隣に腰掛けて応えた。
彼は上機嫌で缶ビールのプルリングに指をかける。

あの部分は断言しているのではない。
質問なのだ。確認なのだ。
この人は私の歌を何も分かっていない。
でもそれでいい。馬鹿なところを好きになった。

ねぇ、サビのどこが良かったの?
彼の肩に頭を乗せて、私は尋ねた。
俺とお前の関係をよく表してる。
彼はまたあさってな感想を投げて寄こした。
愛があれば何でもできる?
その通りだろ。何でもできるよ。

じゃあ、殺してきてよ。今朝まであなたが一緒にいた女。

缶ビールを口から離し、彼が唖然として私を見る。
馬鹿な男。浮気がバレていないと思っているなんて。

私の曲を違法ダウンロードして稼いでいる事も、知ってるよ。通報すれば、賠償金いくら払うか知ってる?

軽く脅しただけで彼は真っ青になった。馬鹿な上に気が小さい。嘘がつけない。そこが可愛い。私の男。私だけの男。

殺してきたら、ダウンロードの件は見逃してあげる。

そう告げると彼は真っ青になったまま俯いて悩み始めた。
これは本当に殺しに行くかも知れない。
私はその様子を見ながらほくそ笑む。
貴方との間にあるものは何なのか。
私はそれを確かめたい。

















5/16/2024, 2:22:04 PM