優雅な音楽、いとも滑らかに動いている足、少し賑やかな外野。そんな舞踏会で、憧れのあの人は今日も色々な人と踊っている。あぁ羨ましい。私もあの人と踊りたい。しかし、私は目立つことが嫌いで嫌いで仕方がない。昔受けたあの視線。昔受けたあの言葉。今はないそれが、今存在する私を苦しめている。
ある月夜、誰もいない中庭で、あの人が一人踊っていた。いつもみせるあの踊りは、やはりというかなんというか練習の賜物であったのだ。そんな練習を邪魔したくはない。だけど、今なら誰もいない。目立つこともないだろう。そうやって自身の心と葛藤していると、あの人と目があった。目があったあの人はとても美しく、私の葛藤をいとも簡単に消し去った。その瞬間、あの人はゆっくり笑って何かを言おうとした。丁度、偶然にも、私は声を出そうとしていた。
「「私と一緒に、踊りませんか?」」
10/4/2023, 11:46:41 AM