柳絮

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神様が舞い降りてきて、こう言った。


「ちょっと金貸してくんない?」
「は?」
白い布を体に巻き付けて、葉っぱの冠を被って、後光で眩しくて直視できないそれは、誰がどう見ても神様なのに、発言が完全にチンピラだった。
「いや喉乾いちゃって」
「はあ」
「100円でいいからさ」
「100円じゃ自販機では買えないですけど」
「いいのいいの。コインで地面ぶち抜いて水湧かせるから」
「200円あげるんで自販機使ってもらっていいですか」
「え、いいの? 炭酸飲みたい」




お祭り


お囃子の音が近づいてくる。神輿、山車、掛け声をあげる男達、子どものはしゃぎ声、女達の鮮やかな浴衣、見物人の波。照りつける陽も、今日ばかりは人々の熱気に負け気味だ。
屋台からは醤油の焼ける匂い、かすてらの甘い香り。射的の間抜けた音と、涼しげな金魚の泳ぐ様。
ああ、やっとこの時期が来た。
神輿の上から、社から、楽しむ人々を見て回る。顔を隠さなくなったのも良い。笑顔がよく見える。
人々の病の快癒を寿いだ。

7/28/2023, 3:51:25 PM